ケリー基準とは?競馬やギャンブルでの応用・シミュレーションも紹介
ギャンブルで使える戦略にはさまざまなものがありますが、中でも歴史あるテクニックの1つが「ケリー基準」です。数学的なアプローチにより、競馬などの賭けやFXを含む金融投資において資金配分を決定する際に用いられます。コンディションやプレイスタイルに合わせてケリー基準を活用することで、スポーツベッティングにおける長期的な利益につながります。
本記事では、ケリー基準の概要から計算式、実際のギャンブルにおけるシミュレーション、応用時の注意点までわかりやすく解説します。スポーツベッティングで有効な戦略を理解し、安定的に勝利を手にするためにぜひお役立てください。
ケリー基準とは
ケリー基準(Kelly Criterion)とは、賭けや投資の最適な資金割当を決めるために使われる数学的アプローチです。自己資金をどのように配分すれば長期的な収益を最大化できるかを計算できる、という理論に基づいています。複利によるリターンを前提とする投資でも応用される手法です。
ケリー基準を活用することで、ギャンブルや投資に使える予算の総額が決まっており、オッズ(リターン)とリスク(確率)が明確な状況で、最適な投資金額を算出できます。特に、リスクを伴う状況で、予想されるリターン(オッズ)に応じてベット額をケリー基準で算出することで、収益の最大化を目指せます。
ケリーの公式:発祥と歴史
ケリー基準は1956年、アメリカの科学者であるジョン・ラリー・ケリー・ジュニア(John Larry Kelly Jr.)氏により発表されました。当初、大手通信企業のベル研究所に勤めていたケリー氏は、長距離電話のノイズ解消を目的として数式を考案し、論文に掲載。
投資やギャンブルでの活用は想定しておらず、ケリー氏自身も個人的に用いるようなことはなかったと言います。後に、金融・数学分野の研究者であるエドワード・ソープ(Edward O. Thorp)氏が、ブラックジャックのゲーム理論に数式を用いたことで、投資やギャンブルの理論として広まっていきました。
現在では、ケリー基準は投資分野の一般的な資金管理の考え方として浸透しています。世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏などが、ケリー基準に基づく分析手法を投資に組み込んでいることはよく知られています。
ケリー基準のメリット・デメリット
ケリー基準の主なメリットは以下の通りです。
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計算式がわかりやすい
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データがあれば計算で最適なベット額を割り出せる
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リスクの高い状況であっても最大限可能な収益を追求できる
基本的には、ケリー基準を計算する際に「勝率(確率)」「リターン(オッズ)」の要素を明確にしておく必要があります。また、リスクを最小限に抑えつつ、最大の利益を得るために有効な手法でもあります。
一方で、デメリットとして以下の項目が考えられます。
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リターン(オッズ)がわかっていても勝率が不安定な場合は扱いにくい
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計算ミスによって損失が増えるリスクがある
ケリー基準はシンプルな考え方ですが、計算に必要な要素のうち1つでも不明確な場合、有効に活用することが難しいでしょう。また、計算ミスがあると短期的なリスクも大きくなる可能性があるため注意が必要です。
ケリー基準の導出と計算式
ケリー基準をどのように使うのか、具体的な計算方法を見ていきましょう。基本的には、勝利への期待値がプラスの状況ではベット額を増やす、反対に不利な状況ではベット額を減らす、というのがルールです。
ケリー基準の計算式は、以下の通りです。
賭け金の割合(投資配分) = (b × p - q) / b
記号が示す指標は以下の通りです:
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b:[リターン(オッズ) - 1]
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p:確率
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q:負ける確率 [1 - p]
例として、勝率が60%、オッズが2.0(1倍)のケースを見てみましょう。各要素は以下の通りです:
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b = 2.0 - 1 = 1
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p = 0.6
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q = 1 - 0.6 = 0.4
賭け金の割合(投資配分) = (1 × 0.6 - 0.4) / 1 = 0.2
よって、資金の20%が最適な賭け金だと計算されます。
フラクショナルケリー(部分ケリー)とは
フラクショナルケリー(Fractional Kelly)とは、「一時的に出る大きな損失によって、利益が上がらず資金管理が不安定になりやすい」というケリー基準の問題をカバーすることを目的とした損失回避法です。
ギャンブルや投資における自己資金は流動的です。よって、高い期待値だと見込んだ賭けのオッズが低いと、負けた場合に損失が大きくなる可能性があり、1回の賭けでも多くの資金を失ってしまうでしょう。
そこで、ケリー基準で求めた賭け金を半分または分割することで、資金の変動を減らしつつリターンも維持できる可能性が高まります。通常のケリー基準をフルケリーとし、半分のハーフケリー、4分の1の1/4ケリーなどに対してフラクショナルケリーという総称が使われています。
フルケリーの計算結果が8%の場合、ハーフケリー、1/4ケリーはそれぞれ4%、2%です。手持ち金額の変動はフルケリーが最も大きく、分割数が多くなるほど振り幅は小さくなります。
競馬におけるケリー基準の活用
ケリー基準では、期待収益率がプラスの賭けや投資で用いられ、リターンが見込めない投資は考慮しないというのが前提です。多くのギャンブルは、当然ながら100%勝てるという保証はありません。
とはいえ、ケリー基準は使えない、と最初から切り捨ててしまう前に使い方を考えてみましょう。競馬やボートレースなどの公営競技で、ケリー基準を活用する方法があります。
公営ギャンブルにおけるケリー基準の考え方
競馬や競艇などの公営ギャンブルのオッズは、ベット額が返ってくる倍率で表示されます。例えば、オッズが4.5倍で100円をベットして当選した場合、450円が手元に戻ってきます。
還元された金額には、ベット額が含まれているため、
戻ってくる金額 = 投資金額 + 期待収益
となり、上記の場合の期待収益は350円です。よって、前述したケリー基準の計算式におけるb値は、この場合3.5と算出され、(4.5-1)と合致していることが確認できます。
なお、海外のブックメーカーなどでは、オッズの分子が、分母をベット額としたときのリターン(ベット額を含まない)を示しています。つまり、表記をそのまま計算に使用できます。
競馬でのケリー基準の使い方
ケリー基準の計算式を競馬で用いる際には、各要素は以下を意味します。
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p:馬券の的中確率
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b:当選時のリターン倍率(オッズ - 1)
ケリー基準 = (p × (b + 1) – 1) / b
的中したときにいくら戻ってくるかを示す回収期待値は、オッズと的中率を掛け合わせたものを指します。つまり、上記計算式の[p × (b + 1)]の部分で、ケリー基準には以下の式が成立します。
ケリー基準 = (回収期待値 – 1) / リターン倍率
回収期待値を使ってすぐに計算したい場合には、上記を用いると良いでしょう。
単勝勝負レースでのケリー基準
競馬でケリー基準を使う具体例として、単勝1点のケースを挙げます。実際の確率を的確に予想することは不可能に近いですが、ここでは仮に期待値を20%とします。
1番人気のオッズが15倍の場合、ケリーの公式を用いると以下のような計算になります。
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p:馬券の的中確率 = 0.2
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b:当選時のリターン倍率(オッズ - 1) = 14
ケリー基準 =(0.2 ×(14 + 1)-1)/14
= 0.14285= 約14%
以上より、資金の14%が最適な賭けであると算出できます。
ケリー基準を競馬に応用するハードル
オンラインカジノやブックメーカーの競馬で、ケリー基準を有効活用するためには、注目すべきポイントがあります。前提として、以下の点を念頭に置いてケリー基準を用いることが大切です。
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期待値100%を超える勝負は少ない
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馬券的中率の判断が重要
そもそも、ケリー基準は「期待値が100%を超える賭けを繰り返す際に、比較的少ない回数の中で利益を最大限得るための資金配分」を計算します。ただ、競馬のように期待値が100%を超える場面を把握しにくケースでは、戦略として活用すること自体が難しくなります。
とはいえ、パチンコやカジノゲームのように期待値が100%を超えるシーンも存在します。例えば、人気馬がダントツで人気になっているようなシーンです。よって、競馬での予想にどれくらい自信があるかによってケリー基準の効果は変わる可能性があります。
加えて、競馬は的中率の判断が難しいことも覚えておく必要があります。多くの場合、最終な判断は主観による的中率が大きく影響します。実際の的中率を知ることができても、「40回に1回」「10回に1回」程度だと理解できれば、馬券の購入をためらう人も出てくるでしょう。
ケリー基準で最適なベット額を割り出し、有利な状況を作り出せるとしても、ギャンブル要素とのバランスが悪くなり、モチベーションを下げてしまう可能性も出てきます。
ケリー基準を使ったシミュレーション
賭けや資金の配分割合を知るためにケリー基準を使うシミュレーションを紹介します。いくつかのケースを想定し、最適な資金配分を確認する方法をマスターしましょう。
コイントス
コインを投げて、表裏どちらが出るかを当てるゲームです。表が出たら勝利し、ベット額は2倍になり、裏が出たら負けのため、ベット額が没収されます。
通常、コイントスは表裏の出る確率は五分五分であり、
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b = 1
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p = 0.5
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q = 0.5
となります。以上の要素から計算結果は0となります。ケリー基準は期待できるリターンがあることを前提としているため、ここでは賭けないほうが良いという結果になります。
では、表裏が出る割合に偏りがあるケースを見ていきましょう。例えば、表が出る確率55%のコイントスに、1ドルをベットするケースです。
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b = 1
-
p = 0.55
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q = 0.45
となり、計算結果は0.1、つまり資金の10%を繰り返し賭ければ収益を最大化できることがわかります。
もう1つ、表の出る確率60%のコイントスで、1ドルをベットするケースでは、
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b = 1
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p = 0.60
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q = 0.40
以上より、計算結果は0.2、よって資金の20%が最適なベット額となります。
ダイス
次に、ダイスを投げて出目に応じた配当を獲得するゲームについて考えてみます。サイコロの目が1・2・3・4のいずれかの場合ベット額は2倍、5または6の場合はベット額が没収されるルールです。
各要素の値は、
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b = 1(2 - 1)
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p = 0.666 ( 4/6 )
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q = 0.333 ( 2/6 )
以上より、ケリー基準は約33.3%とわかります。
次に、倍率が2倍以外のゲームを想定してみましょう。ダイスの目が1の場合にベット額は7倍、それ以外の目はベット額が没収されるルールです。
各要素の値は、
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b = 6(7 - 1)
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p = 0.166 ( 1/6 )
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q = 0.833 ( 5/6 )
計算結果は0.027166、よって約2.76%がケリー基準となります。
ケリー基準は、繰り返し賭けを行う場合に、これ以上の割合をベットし続けると資金ショートする可能性が高いことを意味しています。上記のケースでは、後の条件の方が数値は小さくなりましたが、2.76%未満に抑えれば資金は守られるという保証はありません。
ただ、安全性を考慮するあまり、計算結果よりも低い数値を採用しても、収益の最大化という目的を果たせなくなる可能性があるでしょう。ケリー基準は、資金を維持しつつ、資金を最大限増やせる割合を教えてくれます。
ケリー基準を使う際の注意点
ケリー基準を、スポーツベットアイオーで導入されているスポーツやゲームで使用する際にはいくつか注意点があります。ここでは、長期的な利益を追求するためにケリー基準を活用する際のポイントを紹介します。
オッズの変動を考慮する
ケリー基準の計算式では、オッズの評価が重要です。オッズは、ブックメーカーやオンラインカジノが独自に提供しているものであり、すべてが公正であるとは限らないでしょう。オッズが適正かどうかを慎重にチェックし、最適なオッズを選ぶ必要があります。
ただ、オッズは常時変動するものでもあります。ケリー基準では予想が終わった段階で的中率が固定されますが、オッズが一気に変わってしまうと期待値が大幅に減る可能性があります。競馬で期待値の馬券のみにベットすることは現実的ではなく、オッズの急変動には対応しにくいかもしれません。
リスク管理を徹底する
ケリー基準はリスク管理に直結する手法です。 ケリー基準では、収益の最大化を目指すため賭け金額が大きくなる場合があります。極端な話、計算結果が100%となった場合、理論上では資金の全額をベットすることになります。
しかし、必ずしもそれが良策であるとは限らず、試合内容などの条件で左右されるでしょう。リスク管理を適切に行い、過度な賭けによる資金ショートのリスクを踏まえた上で、ケリー基準を活用することが重要です。
不向きなギャンブルもある
シミュレーションを見てもわかるように、ケリー基準は期待値がプラスであることを前提とした理論であるため、期待値がマイナスの賭けでは活用できません。よって、ハウスエッジが設けられているギャンブルやカジノゲームには不向きのため注意が必要です。
ただ、数学的な裏付けのある攻略法や確率のデータなどがあれば話は別です。例えば、ブラックジャックにおいて、ハイレベルなカードカウンティングの手腕を持ち合わせている場合、理想通りに活用できる可能性もあるでしょう。
資金の増減(ボラティリティ)が激しい
ケリー基準では資金の増減が激しくなる可能性もあるため、フラクショナルケリーも取り入れることを推奨します。前述したハーフケリーや1/4ケリーであれば、ベット額を抑えられるため、損失を減らすことが可能です。
この場合、リターンも減ってしまいますが、ボラティリティを抑えることができるため、長期的に安定した賭けを実行できるでしょう。
ケリー基準以外のおすすめベッティング戦略
ケリー基準以外にも、ギャンブルやカジノで使える戦略や攻略法は多数存在します。ケリー基準の注意点を踏まえ、コンディションに合わせて最適な戦略を選ぶことが勝率アップに重要です。ここでは、特にスポーツベッティングで使える戦略を紹介します。
ヘッジベット
ヘッジベットは、元のベットと反対のベットを追加して、分散させる戦略です。ヘッジベットにより、考えられるおおよそすべての結果を網羅し、最終的な結果によらず可能性の範囲で最大限の利益を確保することを目的としています。
優勝者を100%予想することは難しく、大本命であってもトーナメント期間中にベットするのはハイリスクと言われます。ヘッジベットにより、異なる結果にベットすることで、元のベットの勝敗に関係なく利益を保証できる可能性があります。
ダッチング
ダッチングとは、1つの試合に対して複数のオッズを賭けることで、起こり得るすべての結果に対する利益もしくは損失が同じになるようにする手法です。同じ試合やイベントで複数のベットを行えば、賭け金が分割するため、どれが的中しても同じ配当を得られます。
ダッチングはフリーベットやボーナスを使う際に用いられることもありますが、一般的なスポーツベッティング戦略としても使われています。ダッチングを使う際には、オッズやベッティング手数料などを考慮する必要があるため、計算が複雑になる場合もあります。
例として、合計1,000円の賭け金で、オッズが11/1と5/1という2つの馬に賭けるレースを考えます。オッズが高い馬の賭け金を減らし、配当金額が等しくなるまでもう1つの馬に対する賭け金を増やす、というのがダッチングの基本です。
計算ではまず、オッズを使って期待値となる確率を計算します。計算式は以下の通りです。
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11/1の確率 =(1 /(11/1 + 1))× 100 = 8.33%
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5/1の確率 =(1 /(5/1 + 1))× 100 = 16.6%
続いて賭け金を計算します。
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11/1の確率 =(8.33 /(16.6 + 8.33))× 1,000円 = 334円
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5/1の確率 =(16.6 /(16.6 + 8.33))× 1,000円 = 665円
まとめ:ケリー基準を使いこなして成功確率アップを狙おう
ケリー基準は、投資や賭けで用いられる数学的アプローチです。ケリーの公式と呼ばれる計算式を使って、長期的に収益を増やすために最適な自己資金の配分を割り出すことができます。リターン倍率と勝率が明確な場合に、リスクを抑えて収益を最大化する方法です。
競馬でもケリー基準が示す割合を守るという賭け方には一理あります。ただ、前提としてケリーの基準は期待値がプラスの際に使用するものです。そのため、オッズや確率が変動しやすいベッティングにおいては、計算結果も不安定になるため注意が必要です。
また、リスクを回避するためにケリー基準の半分や1/4を採用するフラクショナルケリーも有用です。ベット額を決める際に有効なケリーの基準を上手に取り入れて、スポーツベットアイオーでの賭けを成功へと導きましょう。
よくある質問
ケリー基準はFXでも活用できますか?
はい、ケリー基準は、長期的に同じ投資に繰り返し資金を投入することを前提とし、自己資金のうちどのくらいの割合を賭ける資産を最大限増やせるかを示します。
ギャンブルだけでなく、トレードなど投資案件において、収益を最大化するために資金の何%を賭けれるかを求めることが可能です。ケリー基準のシミュレーションサイトでは、数値を入力するだけでベット額の割合が自動計算されます。
ケリー基準の他にベッティングで勝つためのコツは?
スポーツベッティングで勝率を上げるためには、さまざまな要素に注目する必要があります。勝つための秘訣の一部を以下に示します。
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ベッティングの結果を記録する
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オッズを比較検討して最適なものを選ぶ
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特定のゲームに集中する
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資金管理を徹底する
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感情的な賭けをしない
気になるスポーツに片っ端から賭けるよりも、1つのスポーツやリーグに絞って賭けを繰り返す方が、データを積み上げやすく分析や検証がスムーズに進みます。また、資金管理や感情のコントロールといったギャンブルの基本ルールも改めて押さえておく必要があるでしょう。
フラクショナルケリーは最適なベット法ですか?
フラクショナルケリーは、ケリー基準のメリットを維持しつつ、資金が大幅に減るリスクを回避するのに役立つ戦略です。通常のフルケリーに比べてベット額が少ない分、リターンも減りますが、損失を軽減できます。
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